自己紹介
子どもたち3人を連れて葬儀場がから10分ほどの火葬場へ来た。
この日は本当に暑くて、太陽が眩しい。そのせいなのか世界がだんだん白く見えてきた。
「火葬場は親族だけで参りますので…本日はありがとうございました」と先程の葬儀場で私が話したので、10人ちょっとしか人は居なかった。
火葬場の入り口は真っ白で先に到着していた夫の遺影があった。彼の体が待っている。
顔を覗ける棺の窓を開けてみんなもお別れの言葉を言う。
火葬する場所に移動する。重苦しく、重圧なドアがあり、「そういう場所」という感じが強くした。
「では、喪主さま、ボタンを押してください」
そう声をかけられた。
なんてこった。私が押すんかい。私が彼を燃やしてしまうのか。
少し、考えたかもしれないし、迷わず押したかもしれない。
『あいしてるよ』
心の中で強くそう思ってしっかりとボタンをおした。
2時間後くらいにまた火葬場にもどってこないといけない。その間に精進落としの食事を近くの料亭のようなところで予約していた。
しかし、ここから5分位の距離なのに本当に世界が白く見えだして『これは倒れるかもしれない』と思った。大阪から来てくれている弟に「ごめん、なんかフラフラするから運転してくれ」と車を分けて移動した。
なんとか移動して、精進落としの料理を前にまた私が話をすることになった。(なんで喪主ってこんなにすることがあるのよ)
話し始めようとしたとき、ふとある記憶が蘇った。
「今日は、夫の葬儀に来ていただきありがとうございました。ささやかではありますがお食事を用意いたしましたのでみなさまお召し上がりください。
ちょうど14年前のこのくらいの時期だったと思います。結婚する前に両家の顔合わせとして彼とこの店を選んで、初めて両家を食事いたしました。まさか、14年後に彼の精進落としをする場所になるなんて夢にも思いませんでした。
4つあった手でも子どもたち3人を育てるのがやっとでしたが、2つの手になってしまいました。また助けていただけたら嬉しいです。」
そう、このお店だった。
彼と選んだ料理は身丈にあってないちょっと高いやつを頼んで、彼の両親と私の両親で食事した。今日お葬式に来てくれていた夫と共通の友人が、「両家の顔合わせでめでたい日だから」とわざわざお店にお花を持ってきてくれた。
あぁなんてことだろう。
なんでこんなことになったんだろう。
とても美味しそうな料理がたくさん運ばれてくるのにちっとも食べれない。ねぇ、あなたは私の食べれないものなんでも食べてくれたのにどうすんのよ。ほら、子どもたちもふざけてばっかりだよ。こんな時、私とあなたの二手に分かれてなんとかやってきたじゃない。
今後どうやって金銭的に生活を成り立たすかというのもあるが、それ以上にここにあの人が居ないことの喪失感の方が強すぎてクラクラする。
食事の時間はあっという間に過ぎて、再び、火葬場に戻った。
予定よりも遅くなり、骨壷に入れやすいように分けてくれている。ちょっとだけホッとした。そのままの骨が残っていたほうが子どもたちはどう思ったか…。
分骨用の小さな骨壷も用意してもらい長男はせっせと分骨用の容器に骨を入れていた。
そして、気に入った骨を見つけるとそれを拾って分骨用の骨壷近くにぽいっと投げた…。
「長男くん、お父さんの骨投げちゃダメだよ」
ちょっと笑いそうになってしまった。なんでこんなに悲しくて絶望的なのに、くすっと笑えるところあるんだろうね。
次男、三男も少しだけ拾って、火葬場で解散することになった。
喪主としてみんなにお礼を言い、子どもたちを車にのせた。(この時にはなんとかくらくらは収まっていた)
「さあ、みんなおうちに帰ろうか。疲れたね」
私がそう言うと、三男はすかさず話しかけた。
「じゃあ、みんなで冷たいぱぱのところに戻ろう」
あぁ。三男。大好きな三男。かわいい三男。ごめんね。もう冷たいぱぱも居ないんだよ。泣きそうになりながら
「三男、冷たいぱぱはもう居なくなったんだよ。骨になっちゃったんだよ」そう話しました。
西日は暑くて、すごく疲れているのにお昼寝もできそうにない。
次男が「昨日はお父さん燃やしてほしくないって言ったけど、仕方なかったんはホンマはわかっとるよ…」と呟いた。
これで、夫のお葬式の日のお話はおしまいです。
長々とありがとうございました。
夫が亡くなって1ヶ月が過ぎ、9月になってしまいました。今でも夢のようで、本当に現実味がないのです。こんなんで生活していけるのかと不安にもなりますが、1日1日は確実に過ぎているのが現実なのです。
夫と過ごした年月は平均寿命からでいうと本当にごくわずかしかなく、たったこれだけの思い出で残りの人生を生きていかんといかんのかと。私はこれからよぼよぼのおばーさんになっても彼は若いままなのかと。なんか納得いかんわ。
一緒に年をとるはずだった。一緒に子育てするはずだった。一緒に悩んだり喜んだりするはずだった。
あまりにも突然の彼との生活が終わってしまい(いや、魂は永遠に共に生きるけど)これ以上、どうあがいても彼との思い出が増えないのかと思うと悔しくて悲しくて。
本当に生きているって奇跡なんだと改めて感じました。
これまで以上に一生懸命にあと、人に頼りまくって子どもたちを自立させることができるように努力したいと思います。
あと、自分の人生もしっかりと生きたいと思います。
これからも『ぽっふん日記』をよろしくおねがいします。
応援ここよ
↓ ↓ ↓ ↓